「小峯巧也美術館」 小峯拓也氏は当協会主催の芸術展で文部科学大臣賞や参議院議長賞を受賞した。画家であり、デザイナーであり、イラストレイターである氏の活躍は一つの枠にはまりきれないほど多方面に及んでいる。 その作品は一見混沌に見え、しかしそこには秩序の萌芽が感じられる。ほとばしる情熱。生命の発散、エネルギーの爆発。おそらく氏自身でも気づいていない秩序への強い希求が潜在しているように思われる。 芸術家は時に予言者となる。時代の闇に誰よりも早く気づき、その感性を頼りに自己の表現手段で警鐘をならす。画家は絵で、詩人は言葉で、音楽家はメロディで。まさに次の時代の先駆者なのである。 氏の作品に時代の閉塞感を打ち破る可能性を感じる者は少なくないはずだ。自己に真摯なまでに誠実であろうとすれば、時に破滅的になり、革命的になるものである。 日本に伝統文化には、弥生式土器に象徴される「穏やかな均衡」だけでは説明できない美の形がある。縄文時代の火焔土器に見られる激しさ、混沌に渦巻くダイナミズムを見逃すわけにはいかない。彼らの縄文人を支えていたものは、事前をつかさどる精霊への畏敬の念だった。恵みをもたらす自然は同時に災害を引き起こす災いの種でもあった。この自然の持つエネルギーへの「畏れ 」がおのれの卑小さの自覚を生み出し、同時に縄文に美の原点であった。 硬直した現代日本の壁を打ち破るには、日本の原文かとも言うべき縄文エネルギーの蘇りが期待される。 小峯巧也という若い奇才にそれを期待するのは決して大げさなことではないと思う。富津にある小峯巧也美術館に足を運び、小峯ワールドを満喫してもらえたら幸である。 記 日本伝統芸術文化協会 小倉宗衛氏 |